週一日しか出逢えない“焼き菓子”の物語。西荻窪「マフィンとスコーン どようび」
週に一度だけ開かれる、「マフィンとスコーン どようび」の小さな扉
駅南口のアーケード街・仲通街を抜け、さらに直進。飲食店と住宅に挟まれた小さな扉が、「マフィンとスコーン どようび」の入口です。うっかり見落としてしまわないように要注意!
オープン時間は毎週土曜日の12時が目安。多少前後する場合もありますが、この扉が開いていたら、営業中のサインです。細く急な階段をのぼって、さらに扉を開けると、焼き菓子の甘い香りがふんわり漂ってきます。
入口の左側がショップスペース。焼きあがったばかりのマフィンとスコーンが、テーブルとラックにたくさん並べられています。
入口から右手奥が工房。中央に作業台、その奥に大きなオーブンが2台あります。
平日は編集者、土曜日だけ焼き菓子屋さん
土曜日の早朝から、たったひとりで200~300個ものマフィンとスコーンを焼き上げているのは、平日は編集者として働いている瀬谷薫子さん。
編集者だった母親と同じ道を進むべく大学の新聞学科で学んでいましたが、小さい頃からパンやお菓子を食べることが大好きで、パン屋さんにも魅力を感じていたそうです。そんな瀬谷さんが、就職活動がうまくいかず心が沈んでいたとき、気持ちを立て直すために始めたのが、街で愛されるパン屋さんでのアルバイトでした。
編集者だった母親と同じ道を進むべく大学の新聞学科で学んでいましたが、小さい頃からパンやお菓子を食べることが大好きで、パン屋さんにも魅力を感じていたそうです。そんな瀬谷さんが、就職活動がうまくいかず心が沈んでいたとき、気持ちを立て直すために始めたのが、街で愛されるパン屋さんでのアルバイトでした。
興味があることにはとことんハマりこんでしまう瀬谷さんは、ここからパン作りに没頭。決まりかけた就職も断り、アルバイトでひとり暮らしをしながら、空いている時間にひたすら焼き菓子作りを重ねていました。そんな日々が約1年続いていたとき、思いがけなく出版社への就職がかなったそう。
「憧れていた編集の仕事は本当に楽しく、充実しています。でも、途中でやめたお菓子作りに未練があったんです。」(瀬谷さん)
「憧れていた編集の仕事は本当に楽しく、充実しています。でも、途中でやめたお菓子作りに未練があったんです。」(瀬谷さん)
編集の仕事に慣れて心に余裕ができた頃、「今ならできるかも。もう一度やってみたい。」という気持ちがおさえきれなくなり、レンタルオフィスを間借りして、週に一度だけお店を開くことに。
瀬谷さんがマフィンとスコーンだけのお店にしたのは、どちらも作るのがむずかしく挑戦しがいがあったこともありますが、「2種類に絞ることでインパクトの強い看板メニューになる」と考えたため。このあたりに、瀬谷さんの編集者としての勘とセンスがうかがえますね。
ひっそりと始めたので、最初の頃は売れ残り、友達に分けたりすることも……。しかしクチコミでじわじわとファンが増え、今ではかなり多めに作っても売り切れてしまう状態だそう。
瀬谷さんがマフィンとスコーンだけのお店にしたのは、どちらも作るのがむずかしく挑戦しがいがあったこともありますが、「2種類に絞ることでインパクトの強い看板メニューになる」と考えたため。このあたりに、瀬谷さんの編集者としての勘とセンスがうかがえますね。
ひっそりと始めたので、最初の頃は売れ残り、友達に分けたりすることも……。しかしクチコミでじわじわとファンが増え、今ではかなり多めに作っても売り切れてしまう状態だそう。
自然と魅了される、“おにぎりのような”マフィン
キャロットマフィン
さっそく、まだほんのりと温かい「キャロットマフィン」をいただいてみました。
こぶしくらいの大きさで、手に持つとずっしり頼もしい重さ。ジンジャーがきいた生地には人参の千切りが入っていて、しっかりした噛みごたえがあります。
甘さはごくわずかで、ほんのり感じる塩味がうまみとなり、ひと口食べるとあとをひくおいしさ。甘すぎないので食事代わりにもなりそうです。まさに“おにぎりみたいなマフィン”。
この個性的な味わいは、どこから生まれたのでしょう?
この個性的な味わいは、どこから生まれたのでしょう?
目指したのは、心と体が元気になるスイーツ
「疲れたときって、甘いものが食べたくなりますよね。でも私は胃があまり丈夫ではないので、もたれてしまうことが多いんです。それに甘いお菓子はどうしても罪悪感を抱いてしまいますし、せっかく元気になりたくてお菓子を食べているのに、残念だなあと思っていました。」(瀬谷さん)
でも時々、なぜかそうならないお菓子に出会うこともあったそう。それは甘みがそれほど強くなく、よく噛める食感があるものだと瀬谷さんは気がつきます。
「人って、口を動かすと元気になるんだと気がつきました。そこから、モグモグよく噛めて甘すぎず、おなかにやさしくたまるような食感があって食事代わりにもなる、でもお菓子としてのスペシャル感もある、そんなマフィンとスコーンを研究したんです。」(瀬谷さん)
でも時々、なぜかそうならないお菓子に出会うこともあったそう。それは甘みがそれほど強くなく、よく噛める食感があるものだと瀬谷さんは気がつきます。
「人って、口を動かすと元気になるんだと気がつきました。そこから、モグモグよく噛めて甘すぎず、おなかにやさしくたまるような食感があって食事代わりにもなる、でもお菓子としてのスペシャル感もある、そんなマフィンとスコーンを研究したんです。」(瀬谷さん)
研究の末にたどりついたのが、バターの代わりに菜種油・豆乳・豆腐などを使い、甘さを控えめに、ほどよく塩味をきかせた現在のレシピ。冷めてもおいしく食べられることも、工夫したポイントのひとつだそうです。